「多専門連携による司法面接の実施を促進する研修プログラムの開発と実装」プロジェクト
プロジェクトの概要
プロジェクト代表 仲 真紀子(北海道大学)
本研究プロジェクトは、2008 年度から実施してきた科学技術振興機構(JST)「犯罪から子どもを守る司法面接法の開発と訓練」と2012年から実施してきた文部科学省平成23年度科学研究費補助金(新学術領域研究)採択研究領域「法と人間科学」の研究課題「子どもへの司法面接:面接法の改善とその評価」を引き継ぐプロジェクトです。JSTプロジェクトでは、子どもの目撃者、被害者からできるだけ正確に情報を得るための面接法を開発し、児童相談所等の専門家に研修を提供してきました。新学術領域研究課題では、基礎研究と研修を行い、対象となる面接者や被面接者を広げ、面接法の評価を行って来ました。本プロジェクトでは,多専門連携を困難にする心理的要因を調査し,精神的負担に配慮しつつ正確な情報を多く収集する面接法(司法面接)の習得,共有,連携を支援するプログラムの開発を目指します。研修と基礎研究を繰り返しながらプログラムの充実を図り,技能をもつ専門家,トレーナーの育成と実事例の支援を通じて社会実装を図ります。
プロジェクトの内容
子どもに関わる事件,事故,虐待事案等においては,出来事や体験について,子どもからいかに正確な情報を得るかが重要な課題です。そのなかでも,子どもに負担をかけず,正確な情報を引き出す面接法(司法面接:forensic interview)の開発は,子どもの認知発達の検討とも関わる,緊急性の高い研究課題です。プロジェクト代表は先行研究において,①基礎研究を行い,②その成果を踏まえた面接法を児童相談所職員,警察官,検察官に「研修」として提供し,③効果測定の結果を基礎研究へと投入するというかたちで研究を進めてきました。本プロジェクトの目的は,これらプロジェクトを継承し,多職種の専門家が連携(協同)して行う司法面接の実施を促進する研修プログラムの開発と実装を目指す。
(1)司法面接・多専門連携の研修プログラムを開発し,
(2)実務家・実務家に研修を行い,
(3)研修でのフィードバックを基礎研究に活かし基礎研究の成果を研修に反映させます。
研究グループの概要
仲グループ:多専門連携による司法面接の推進と実事例支援
虐待事案への対応には、福祉と司法、医療、心理の連携が欠かせません。福祉は子どもと家族を支え、司法は加害が疑われる人に対 応します。医療的な対応、心理的な支援も重要です。仲グループでは、 異なる専門性をもつ専門家が連携し、協同して司法面接を実行でき るような研修プログラムを開発します。また、各機関で広く司法面 接研修が行えるように、トレーナーの研修も行います。
羽渕グループ:通訳・仲介者のいる面接のあり方と支援
出来事や気持ちをうまく伝えられないことで、助けを求められな かったり、問題の発見や解決が遅れたりする事例は、子どもだけで なく、ことばのサポートが必要な成人にも共通する問題です。羽渕 グループでは、子どもの司法面接法を応用し、主に外国人を対象と して通訳・介入が必要な司法面接について研究をおこないます。そ して、弊害が少なく、かつ、現場での実用性を備えた面接法やツール、 訓練(研修)プログラムの開発をおこないます。
田中グループ:司法面接と心理臨床の連携
田中グループでは、子どもに対する事実確認(司法面接)と心の ケア(心理的な支援・心理臨床)の協働と連携について検討します。 被害の疑いがある子どもへの対応や被害の事実確認時の心理面への 影響等の情報収集をし、受容的聴取と客観的聴取において得られる 情報の違いについて実験的に検討します。また、司法面接における 臨床的介入の形態を調査します。これらを踏まえ、事実確認と心の ケアの連携をテーマとした実務家研修を実施します。