報告

201066日()

イスラエルのミルマンセンターを訪ねて

 イスラエルで、発達障害の子どものため療育センターを訪ねた。
 街の中心部から郊外に向かって車で15 分も走っただろうか。目指すセンターはアパートの立ち並ぶ中に紛れ込むようにしてあった。何度か前を通ってもその入り口さえ見つけることができず、近くで遊んでいた子どもに教えてもらってたどり着いたのである。イギリスやアメリカでも有名なセンターやクリニックは目立たず、ひっそりと建っていることが多い。大きくて目立つ看板や門構えを期待して見つかったことがない。しかし、謙虚としかいいようのないその外観とは異なり、行われている事の先進性は驚くばかりである。ここもそうであった。建物は平屋で比較的手狭なセラピー室が8 部屋ほどあり、スタッフ室が3 部屋程度である。決して広くはない中でこれだけの事をするのかと驚いてしまった。幾つか紹介したい。

早期発見・早期支援の徹底
 できるだけ早期に療育を始めると効果も大きい。通常は18 ヵ月の乳幼児健診で支援が必要とされた子どもたちが紹介されて通い始める。診断は療育の経過の中で必要に応じて行われる。診断がつくと療育費が無料になる等、様々なサポートが保証される。早期に支援を行う事で失うものはないと考えている、とのこと。

スタッフの充実
職員は120 人で、職種は心理療法士、言語聴覚士、作業療法士、アニマルセラピスト、音楽療法士、ソーシャルワーカー、小児科医である。通常1 人の子どもに5 人の専門家がチームとなって、評価と療育、その後の効果判定、ケースワーキングなどを行う。多職種チームがここでは通常のことである。親も必ずこのチームの一員として参加するのも特徴。

システムの柔軟さ
 子どもの生活スタイルに合わせてセラピーが組まれる。登校前や放課後に行うことも多い。スタッフは自分のケースのセラピー時間に合わせてこの場に集まる。それ以外の時間は他の場所で支援を必要としている子どもと会っている。例えば、病院や学校など。スタッフの都合に子どもが合わせるのではなく、子どもの都合に大人が合わせるのである。

 温かな雰囲気のミルマンセンターであった。私がこれまで経験したことがないほど、ここでの療育は明るく朗らかという印象を受けた。
 イスラエルは徹底している。子どもが最優先なのである。育っていく子どもたち、伸びていく子どもたちのための環境を大事にしている。そのことが専門家の中で明確さを持って一貫していると感じた。その姿勢は子どもの虐待の問題にも共通していて揺るぎがない。どの専門家も職種は違っていても同じであった。

文責(中野育子)
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司法面接支援室 : 立命館大学 ・ 大阪いばらきキャンパス(OIC) ・ OIC総合研究機構 / 総合心理学部