報告

200923日()

オレゴン市内CARES NORTHWESTを訪れました

 1月に米国サンディエゴ市で開かれた第21回子どもと家族の虐待に関するサンディエゴ国際会議(21st Annual San Diego International Conference on Child and Family Maltreatment)に参加した後,2月3日米国のオレゴン州にあるケアズ•ノースウエストという司法面接施設を訪問した。
 この施設は性被害を受けた(とされる)子どもを対象に司法面接を行う施設である。エマニュエル子ども病院内の1つのビルにオレゴン州警察,医者,司法面接官,心理学者,インテーク•カウンセラー,ソーシャルワーカー,ボランティア(子どもと待ち合い室で遊ぶボランティアと,そのボランティアを指導するボランティアなど多様なボランティア),書き起こし係など55人の専門家が勤務し,子どもやその家族に対応している。司法面接を依頼してくるのは主に福祉施設である(Department of Human Services),警察などである。月に250件ほどの照会があり,うちおよそ半数について面接を行うとのことであった。この施設は1980年代に,ある医師が,子どもがケアを1カ所で受けられるようにと開始した。当初は「クローゼット」を用いての活動であったという。
 メールで何度かやりとりをさせてもらったキャサリン•クローガーさん(修士号をもつ,司法面接のトレイナー)が,施設を案内をしてくれた。施設には会議室(TV会議による査定等も行なう),受付事務室(6人の人が勤務。訪問中も電話が入る),書き起こし室(2人がトランスクリプションを行なう),4つの面接室,診察室,広いトイレ,キッチン,クロゼット(保護されてきた子どもが着られる衣服,靴等もある)などがある。キャサリンさんは,「狭い」「この部屋は窓がなくて恥ずかしい」等と言っていたが,とんでもない,すばらしい施設である。
 オレゴン州では性虐待,身体的な虐待(特に頭部の怪我)については48時間以内,それ以外は84時間以内に面接を行うことが義務づけられている。ここでもその基準で面接を行なうが,性虐待については,必ずしも「すぐ」がよいわけでない場合もあるとのことであった。
 毎日の日課として,通常は8時半頃から面接を開始する。面接室には大きなワンウエイミラーに向かって細長いカウンターがあり,そこに2人(面接者と被面接者)が座るようになっている。ワンウエイミラーの反対側は暗い小部屋になっており(暗くないと面接室から見えてしまう),ワンウエイミラーの裏側には面接室を撮影するカメラが設置されている。観察者はこの小部屋で,ワンウエイミラーを通して直接,ないしはモニター画面を通して間接的に,面接の様子を観察することができる。音声はスピーカーまたはヘッドフォンで聞くことができる。私たちも刑事やソーシャルワーカーたちと一緒にすべての面接の過程を見学させていただいた。


面接は以下の4つの過程からなる。
◆親との面接:まず面接官と医者が親に面接を行う。面接官は親に「この面接は訓練の一部をなしており,刑事,ソーシャルワーカー,その他の専門家(小部屋で観察させていただいている私たちのことである)に,私(面接官)の面接の様子をに見てもらうようになっているが,それでもよいか」と許可を求める。許可を得たのち,どのような問題でここを訪れたのか等,事情を聞く。
◆子どもの診察:目,口,鼻,皮膚,性器等の診察を行なう。音声はすべてヘッドフォンで聞くことができる。
◆子どもとの面接:面接者(1名)が子どもから話を聞く。ここでもまず子どもから,観察の許可を得る。子どもはプレッツェルのようなスナック,水,用紙,ペンなどを与えられ,絵を描きながら,話をすることができる。面接は一時間程度であるが,終了間際,面接者はワンウエイミラーの反対側の小部屋に来て,他に聞くべきことがないか等の確認を行う。
◆親へのフィードバック:子どもが話したことを親に伝える。また,身体検査等もふまえ,親子にアドバイスを与える。

当日は2つの面接を観察させていただき,その後も施設の説明や,資料の説明,ビデオの紹介などをしていただき,朝8時半から5時まで,頭も心もいっぱいになって帰路についた。なによりも最初は「クローゼット」から始まったという施設であることに励まされた。

仲 真紀子

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司法面接支援室 : 立命館大学 ・ 大阪いばらきキャンパス(OIC) ・ OIC総合研究機構 / 総合心理学部